岡山大学病院 低侵襲治療センター

上部消化管チーム

臓器:胃

胃癌に対する腹腔鏡下手術の歴史

1989年海外にて胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢切除術が報告され、消化器外科領域の低侵襲治療の幕開けとなりました。1990年に本邦で腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行され、当初は外科系の学会でも賛否両論でしたが、傷が小さく整容性に優れ、痛みが少ないことと、技術・器機の進歩と共に手術時間の短縮、安全性の向上などにより現在では標準治療となっています。

胃癌に対しては1991年本邦でリンパ節郭清を伴う腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG)が世界に先駆けて施行されました。しかし、技術的な難しさに加え、癌の手術をするための内視鏡用の鉗子・カメラなどが未発達であったために普及には至りませんでした。1990年代中頃は、より簡単な腹腔鏡下胃部分切除や胃内粘膜切除などの手技が開発され、まず小手術として普及していくことになります。1990年後半に入り、手術術式の定型化や器機の進歩によりLADGが再び脚光を浴び、2001年には「胃癌治療ガイドライン」がLADGの適応を取り上げ、2002年には保険適応となりました。日本内視鏡外科学会のアンケート調査では2001年までに国内で4,552例の腹腔鏡下胃切除術(胃部分切除などを含む)が行われていました。

当院での胃癌に対する腹腔鏡手術の現状

当院では2002年にLADGを導入、本格的に開始したのは2006年ですが、現在までに腹腔鏡下胃切除術を150例行っています。適応は早期胃癌で幽門側胃切除術(幽門保存胃切除術を含む)に限定していましたが、技術的な進歩に伴い2010年10月より難易度の高い腹腔鏡補助下胃切除術(LATG)、腹腔鏡補助下噴門側胃切除術(LAPG)を開始、また、進行胃癌に対しても2群リンパ節郭清(D2)を伴うLADGを開始しています。

開腹手術と比較した腹腔鏡下胃切除術の利点・欠点

利点
欠点

最近のトピック

ロボット手術の導入

2011年2月より内視鏡手術支援ロボットda Vinciサージカルシステム(da Vinci SHD)を胃切除術に導入しました。従来の腹腔鏡手術の欠点である技術的な難易度の高さを克服するため、3Dのハイビジョンカメラ、ロボットアームに取り付ける手術用鉗子の先端が人間の手首・指先のように自由に曲がり、手ぶれがしないため精密な手術が可能などの最先端の技術が導入されています。腹腔鏡下胃切除術を300例以上経験した日本内視鏡外科学会技術認定取得医により、胃癌に対し安全で緻密なロボット手術を行っています。

腹腔鏡下噴門側胃切除術、「観音開き法」再建

胃上部早期胃癌に対して胃の下2/3を残す腹腔鏡下噴門側胃切除術を積極的に行っています。術後逆流性食道炎を生じにくい「観音開き法」という特殊な方法で食道残胃吻合を行っています。胃上部早期胃癌には多くの施設で開腹胃全摘を選択していますが、腹腔鏡で行い、胃を残すことでより体に優しい機能温存手術を達成しています。

腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)の導入

胃粘膜下腫瘍の多くはGISTという悪性化する可能性のある腫瘍です。5cm以上であれば開腹手術の適応ですが、5cm未満では腹腔鏡下胃部分切除の適応となります。その中でも胃の内側に発生したGISTは腹腔鏡では存在部位がわかりにくく、大きく胃を切除してしまうことがありました。LECSは胃の内側から胃内視鏡で腫瘍の周囲を切開し、腹腔鏡で腫瘍を摘出、胃の切開した部分を閉じるという方法で、最小限の胃切除に留める新しい低侵襲手術です。2011年からLECSを導入し、良好な成績を収めています。

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